読書録#14 D.Mosse”Cultivating Development”と瑞牆クライミング合宿

さて課題図書の3冊目、D.Mosse (2006) “Cultivating Development“イギリスのDFID(UK Department for International Development)がインドにおいて、1990年~200年代初めに行った参加型開発のプロジェクト(IBRFP)に継続して従事した、「人類学者コンサルタント」の著者が記した本。現場から地域開発の理論の根本に向けて、痛烈な批判を行っている。邦訳は無い。

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最初に著者は5つの前提を明らかにしている。その5つとは、以下のとおりである(pp.15-19)。

  1. policyは「実践の方向付けを行う」ものというより、「正当化」のための政治的後押しを機能させるものである。
  2. 地域開発はpolicyによって進められるのではなく、組織的な事情や、関係性の維持のために実施される。
  3. 開発プロジェクトは、政治的アイディアやオペレーションの仕組み両方に矛盾しないようにしながら、プロジェクトの継続を図るように機能する。
  4. 開発プロジェクトは計画を履行する局面において失敗しない。しかし、より広い援助と検証のネットワークによって失敗させられる。
  5. 「成功」や「失敗」は政治的な方向付けによる決定であり、プロジェクトの実際の効果を不明瞭にする。

 

このような立場に至ったのは、実際にプロジェクトの中で起こったことの反省と総括からであろう。
2~9章では、プロジェクトの失敗を色々な側面から検討しており、それらはかなり生生しく批判的に書かれている。例えば現場のスタッフの人間関係や評価に対する反応、またはプロジェクトが本来の目的から反れて組織・予算の維持に向かうこと、もともとのコミュニティの力関係・不平等を増幅させてしまうことなどである。開発的介入が非常にプラクティカルな事情で駆動していることが分かる。どんな会社や組織でも起こりやすいことであろう。また、参加型開発手法への批判として、教育を受けた人や、コミュニティのリーダー格の人の意見が大きくなりやすく、均質集団の「参加」になりがちであるという点、もっとも貧しい人たちの声は「無声にされる」と言う点が提起されている。(pp.4, 82-87)

著者の批判的視点は開発援助の考え方の根本におよぶ。
先進国どこを見ても開発プロジェクトによって「発展」を遂げた所は無く、「発展」とか「開発」と言った概念は、政治的意図そのものである。そのため、いわゆる開発援助のプロジェクトを行うことは、政治的意図の実現と同義である。植民地と同じように、開発の理論は認識をコントロールし、社会に制約を与えるものに他ならない。プロジェクトはドナーの提供できるもの・提供したいものの範囲で動くし、クライアントにとっては内容が何であるにせよ外部資源を獲得する手段となる。(p.36, 94, 136, 229)

また、自身の職能についても論点は及ぶ。
まずコンサルが一貫した開発理論を使って仕事をしているわけでは無い、とした上で「Consultant thought-work(コンサルタント的頭でっかち仕事とでもいうべきか)」による理論(モデル)は、セクショナリスムに陥りがちである上に実戦に役に立たず無力、しかしドナー対応用の説明としてはどんどん洗練される。プロジェクトの予算を確保しながら、実態に合わせて「成果」を示さねばならない中で、頭でっかち理論が打ち出されていく…自分自身が10年以上にわたり携わってきた仕事を、ここまで批判するのかと思うような内容である。(pp.34, 150)

そんなら今後、どうすれば良いのだろうか?本書の最終章は、批判的視点を持つことの大切さと、現場では事務的・政治的事情に対面することを忘れないように、という内容で結ばれている。著者はSOASの教授で、Oxfam南インドの代表でもある。本作を出版してからの10年、どのような仕事をしてきたのか興味深いところである。

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読書録は終わりで、ココからはクライミングの話。少し前になるが、瑞牆山のマルチピッチデビューを果たした。ルートは十一面のベルジュエール(5.11b,8P)。簡単なピッチは(p3,p7,p8)はリードしたが、フォローのピッチも多彩で素晴らしいルート。5ピッチ目くらいからかなり疲れてしまい、行動食を補給して元気を出すというのを繰り返し、なんとかトップへ。

ただ岩の上に登って周りを見渡すと、強烈に「ココに居る、生きてる」という感じがした。純粋経験とはこういうのかなと、最近読んでいる京都学派の(やさしい解説)本を思う。

一緒に登ったパートナーに感謝。
向かいの岩から写真を撮ってくれた方にも感謝。8時頃から登り始めて、駐車場に着くころには暗くなっていた。

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そして、8月15日~21日は夏休みクライミングツアー。北杜市の友人の家に泊めてもらい、天気次第で瑞牆山や近所のボルダーに向かう、シンプルな生活をすごした。天気が不安定だったこともあり、全体としてはボルダリングがメインになったが、屏風岩ではクラックもスポーツルートも手をつけた。トラッドを始めたことで岩場での選択肢がずいぶん増えた。

クライミングはさておき、今ツアーは沢山の人が集まり、一緒にご飯を食べて過ごす時間が本当に楽しかった。そんな空間・時間を作ることができるのは、ホストの横山ジャンボさん一家の懐の広さであり、山や自然の豊かさであり、それを大好きな人たちの集まりだからだと思う。

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帰路、群馬の山々を改めて眺めた。群馬は素晴らしい山が沢山あるし、クライミングエリアだってマダマダありそうだ。しかし、たいがいの人の目は奥秩父方面に向いており、中々県内の資源を掘り起こそうという人は少ない。有笠や周辺の岩場を、長野や東京近辺のクライマーが開拓しているのは、その証拠だ。そこまでいかなくても、群馬の岩場はホントに素晴らしいんだよ~、と語れる人がどれくらいいるだろうか?大小とりまぜれば、本当にたくさんのエリアがあるはずだ。

わざわざ二子山に行って混雑している人気ルートに取り付かなくても、榛名や中之条にだって良いルートがたくさんあると思う。と言いつつ、自分でもあまり行ったことはない。東京に近すぎるから、思考も植民地化されているのかもしれない。ボルダリング以外でも、群馬のクライマーが地元の魅力にもっと敏感になればいいのにと思う。

状況や対象は全然違うが、前掲書の示唆に思いをめぐらす。地域開発、地域活性化と、何が目的だろうか?外部からの思想無しではやり遂げられないものではあれ、やっぱり地元の人・社会やコミュニティ・環境に、長い息づかいで為になるものでなければならない。まして、行政組織の計画を完遂するためにやるわけではない。

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さて、ツアーの最後はみなかみ町内の岩場偵察。近づいてみたらボロボロの安山岩で、まったくクライミング向きではなかった。しかも、これだけ大きい岩山の近くだから石ころはあろうと思っていたが、ボルダーの影も形も無かった。石切り場の跡があったことから察して、地表に露出した大きな岩は、庭園や積み石として採石されているのではなかろうか。

ところで、この岩山、観音岩と呼ばれており、鎌倉時代(1260年)に熊野から勧請したという由緒の残る須川の熊野神社、これが関係するという馬頭観音を祀る山であったそうだ。ふもとは肥沃な土地が広がり、縄文時代から耕作が行われていたと言う。真東を向く岸壁は、太陽の光を浴びて、観音様のように集落を照らしてきたのだろう(これはちょうど草刈をしていた方に伺った)。

岸壁の基部まで続く登山道には、そこかしこに石碑があり、霊的な雰囲気が感じられる。枝が払われ、きれいに整えられた道や、最近普請された小さなお宮を見るにつけ、綿々とこの山、岩が地元の人に大切にされてきたかが伺われた。

舗装された林道から30分ほど歩くと、基部直下に到着する。立派な観音堂があり、阿吽の石像が入り口の階段を守っていた。お堂の横に立つ石碑の文字は、安永○○年、と読めたので、18世紀後半ということになる。すごく家から近いのに、全く知らなかった。普通の散策似よいかもしれない。

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岩場的にはオケラで、汗だくになり、同行者は3箇所もヒルにかじられてかわいそうだったが、興味深い散策だった。

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【ツアー記録】
8/15 瑞牆山ハットエリアでボルダー
8/16 近所のボルダー(人が沢山)
8/17 不動沢屏風岩でクラック、スポーツルート
8/18 Naヨガのレッスン, Dinner@bistro BAGABOO
8/19 近所のボルダー
8/20 Lunch@bistro BAGABOO, 整体と呼吸の練習
8/21 みなかみで岩探し&散策

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