読書録#11:Bob Jessop “The State: Past, Present, Future”

グアテマラに来て2週間、今日はQutzaltenango近くのスニル見学→温泉→ウエウエテカでグアテ料理。他の学校で勉 強している日本人の方と一緒だったが、外の人と積極的に話していて、スペイン語を使う姿勢に学ぶところが多かった。いろいろ理由をつけてチキっていてはダメなのだ。

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さて、4月〜6月に京大の講義に出ていた際のテキストについて、書き残す時がやっときた…
Bob Jessop “The State: Past, Present, Future”

イギリスの社会学者、政治学者で、マルクス経済学をベースとした国家論を専門にしている筆者の最新刊。とにかく用語が難解で、3ページ目に 「imbrication(うろこ状に重なった状態)」という、自分では一生使わなそうな初見の単語が出てきて、たじろいだ。

これ以外も、普通の辞書アプリに載ってな い単語が頻出。よく出てくる接続詞なども普通じゃなくて、「a foritiori(なおさら)」、「inter alia(なかんづく)」とかである。ヨーロッパのインテリ層がラテン語由来の言葉を好むことがよくわかった。

複合的で関係依存的な存在として国家を語っているため、著者が注意深く断定を避け、複眼的に論じているので、抽象度が高く、日本語訳も無く、学部生向けの講義のテキストとしては難解すぎるように思われた。担当の先生が純粋に読みたかったのもあるみたい。

分からないところが多かったが、一応「読んだ」ので簡単に結論だけまとめると、

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●国家(State)

タ イトルにもある通り、この本のテーマは「国家=State」だ。スタンダードな国家論によれば、国家は3つの要素から成る。

1つ目は、「国家機構・組 織」。2つ目は”想像”の共同意識に拠る「国民」、3つ目はこの国民からなる共同体の共通利益を反映した「領土」である。ジェソップは、4つ目として、 これに「国家の意思(the state idea)」を付け加えて論を展開する。

国家とは多様な主体・組織の絡み合った複合体であり、政治家や官僚が国家の意思の遂行を担っている。そして「想像の共同体」を共有することで成立している以上、主流のアイディアや利益から外れるものは、周縁に追いやられることは避けられない。

また、国家という、何か単一の一枚岩のものが動いているわけではなく、様々な政治・社会・自然環境に生まれながらにして埋めこまれており、その動きは常に関係性の中でバランスしながら進められていくものである。

●「国家」の現在

マー ケット主導のグローバリゼーションが進む中で、お金の流れ、人の流れ、情報の流れ、またそれに伴う力の行使は、ますます越境を厭わなくなっている。

これを見るにつけ、国家の垣根が低くなっているように思われるかもしれないが、それは表層的な見方であって、実はそうではない。実際は、グローバリゼーションと 新自由主義的な緊縮政策の潮流を、根深く支えている存在として、国家は機能してきたし、現在も機能している。

そしてこの結果として、世界的 に貧富の格差の広がり、社会的矛盾の深刻化、恐慌(Crisis)への傾向、などが観測されているのが現在の状況である。さらに、へゲモンとしてのアメリ カの力が弱まるなかで、他の大国(特に中国)が地理的・経済的にその地位の向上を追求することは確実である(例えば、AIIDは着実に加盟国を増やしている)。

地理的な追求はつまり領土の拡大であり、経済的な追求は、多国籍資本に有利となる政治レジームの構築である。2つとも、共通の利益を 持つ共同体を守るには、とても重要なことに思われる。そして、この2つの追求がますます進むと同時に、カウンタームーブメント(civil society)がさらに脇へ追いやられることが予想される。

※日本語はへの訳出は私の独断。

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●イギリスのEU離脱の話

ところで、ジェソップの母国であるイギリス、先日EU離脱が国民投票で確実となったようだ。先日やっと大学からビザの申請に必要なCASが届いたところで、 先行きが見えない情勢の中での留学と思うと、複雑な思いになった。前述のJessopに触れながら、今回の離脱を論じている記事があったので読んでみよう(Social Europe)。

これによると、イギリス国内では、左派は離脱は国際協調を掘り崩し、WWⅢの始まりになると か、右派移民の大量流入やEU中心主義の悪影響を防がないとならないとか、喧々諤々、みんなが世界のう終りか始まりのように議論している。だが実際のトコ ロ、イギリスに対するEUの影響力はそんなに大きくないという。EUの規制力みたいなのも、かなり難しい面があるようだ。

筆者はEUに参 画していることをスケープゴートに、国家としての失敗―雇用の確保や社会保障の問題、を避けてはいないか、と指摘しており、結論として、ネ オリベラリズム・マーケット主導の政治経済を他国を待たずに変革するために、EUからの離脱を進めるべきだという立場をとり、その変革に向かう力として市民社会に期待を寄せている。

本当にそうだろうか?EUの強制力が小さいなら、十分に自立して各種の政策を行っているなら、イギリスがEUのメンバーのままでも、 革新を進めることは可能なはずだ。「EU参画」がスケープゴートとして使われているから、離脱したら状況が変わる、というのは如何にも論拠として弱い気が する。

ただし、私がショッキングに思うのは、EU離脱という選択が歴史に投げかけるものだ(少し長期的な)。やはり、世界のあちこちで見ら れる右傾化の流れの1つ、という意味合いが大きいように見える。アメリカでトランプ人気が見せるように、日本でも改憲の動きが着々と進んでいるように。

ジョージ・ソロスが国民投票の前に、英国経済への懸念を警句として投げかけていたが、ポンドやユーロが乱高下したり、各国が自国経済中心主義(略してジコチュー)のグローバル化に走った時、得するのは誰だろうか?

あと、グアテマラ滞在中の宿題として、ASEANについての本も読んだのだが、EUの顛末を見るにつけ、政治・経済・文化教育における、広範な協力を目指し たASEANの枠組みは、けっこう理想と乖離せざるを得ないだろう、というかかなり無理があるのだろうなぁという感想を持った。大国に相対するとか共通の 目的をケースごとに積み重ねることはできるだろうけど。

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●グアテマラについて

6月10日から グアテマラに滞在していて、色々なことは後でまとめようと思っているが、中間の感想としてちょっと思っていること。グアテは民族の多様性に富み、中米の中 でも「少し変わった国」らしいが、北米と南米をつなぐ場所に位置し、メキシコや周辺国との往来も多い。

大国で無いからこそ、他の国の影響を受けると同時にアンテナがはられているように思われる。特別な部分にビックリしつつも、ラテンアメリカ全体に触れる機会が多いのではないかと感じている(勘違いかもし れない)。

そういえば「ラテンアメリカ」というアイデンティティは、このあたりの人たちの中に、結構強いものとしてあるのかなぁ?かつては多くがスペインの植民地であり、その後はアメリカの経済圏に接続された国々、と言えると思う。

子 どもは目がくりくりで本当にカワイイが、大人は肥満体の人が多い。街路はゴミだらけだし、少し田舎に行くと物凄い量のゴミが投棄されている。川は目を覆い たくなるほど汚かった。どちらも使い捨て・消費文化のもたらした害悪、紋切り型の批判をして嘆くだけでは仕方ないのは分かっている、つもり。。。

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ノミに刺されたのか、手洗い洗濯で洗剤が落ちきっていないのか、昨日から身体が痒くて仕方ない。(良いことも沢山あったので、それは後日)

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読書録#11:Bob Jessop “The State: Past, Present, Future”」への2件のフィードバック

  1. Very interesting post on Jessop’s The State: Past, Present, Future!

    This is my take on Brexit based on Jessop’s ideas. In Chapter 8 of “The State”, Jessop argued that it is mistaken to think of “state decline in the face of globalization.” (Countries in G7 except post-reunification Germany have increasing government spending as percentage of GDP. https://data.oecd.org/gga/general-government-spending.htm#indicator-chart.) “Small government” is only a mirage conjured by the ideologues of neoliberalism. If anything, it is the retreat of the Keynesian Welfare Nation State (KWNS) i.e. government deregulation and privatization of welfare, and the advance of a Schumpeterian Workfare Post-National Regime i.e. zero-hour contracts. (The transformation of KWNS to SWPNR is within Jessop’s the state’s fourth element: “the idea of the state.”)

    The decline of KWNS and advance of SWPNR came with the “denationalization of statehood” (国家諸機能の領域的な解体・再編), “destatization of polity, politics, and policy” (官民連携・PPPなど行動・機能上の国家と非国家との境界線が再編成、government→governance), and “internationalization of policy regimes” such as the EU and Asean Community, and JEPAs, NAFTA, TPP, and TPIP.

    Under this environment, states are obliged to promote a narrowly conceived economic competitiveness (such as using the index by the Global Competitiveness Report by the World Economic Forum) and pushes extra-economic spheres of life (such as caring for the young and the elderly) into the logic of capital accumulation.

    However, the global market integration and the intensified subsumption of life spheres are connected to the current predatory, fiinance-dominated regime. The City has grown to become a global center for international banking and global capitalism. At the same time, inequality is a growing problem, and yet “competitive austerity” has become normal in the UK that has hit the poorest Brits the hardest (http://policy-practice.oxfam.org.uk/publications/a-tale-of-two-britains-inequality-in-the-uk-314152).

    As the current predatory accumulation regime survives, human flourishing and the natural environment wold be more damaged. Brexit is the expression of British people’s reaction against the intensification of contradictions. They chose nationalism as a vehicle to overcome their helplessness on their plight and against the internationalization of policy regimes. In this context, they are not different from the tendencies in many parts of the world such as China, and Trump’s United States.

    The future will tell us whether the helplessness of the British people leads towards a postdemocratic competitive state in the UK, or whether their resistance and their desire to overcome the global and local contradictions lead to linking up with resistance in other countries and provide an effective challenge to the current predatory accumulation regime.

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    • Thank you for your comment, Sr.Chuleta de Cerdo. Actually the book is too masive and some of the important arguments have already missed from my mind. Too bad…or good to save the room for other memory?

      First of all, I totally agree with that the austerity policy is functioning patially or particulary. And as you point out above, I think that the flow of the conversion of postmodern states, which bases on the neoliberal political tendency, intrigues the competition between “sovereign” states, and it leads to emergence of the movement toward authoritarian states.

      And I also agree on this; there is accumulating disatisfaction in the UK society, and hopefully, it can be the trigger of the counter movements. In case of the US, many young people think that Sanders should win, but thanks to the high developed democracy system, he was not chosen as a candidate. Actually, my housemate here is from the US and very dissapointed with the result. It seems that he is not that left but a decent sutudent from California.

      In case of Japan, there is an obvious tendency toward militalization, and deepning crevasses in the society, too. However, we have experienced (or are experiencing) enomous natural-artificial-combined-disasters. Seemingly, it forces the significant change on the mentality of Japanese people.

      By the way, I do not like the term of “predator”. I wonder how he defines himself, when he calls prople in the market “predators”. Maybe herbivorous or 草食系. :O
      However, most of people reading this book are sharing the responsibility for this law-of-the-jungle-world, to some extend. (It doesn’t mean that we can let things go on)

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