京都じまい その3:@京都

5月10日は会社の退職日だった。京都から離れる準備も最終段階。

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さて、4月から科目等履修生としてパートタイムの学生生活を送っている。一つの授業で先日に自分のプレゼンがあり、シュマリーを作るとともに考えたことについて。

David Harvey ”Enigma of Capital:and the Crises of Capitalism

テキストはマルクス経済学の泰斗D.ハーベイの著作。日本語訳も出ていて、「資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義」。

まず内容はさておき、英語でのディベートができない。英語力への不安もあるが、自分が思っていることを伝えられない悔しさ・・・!!通読するのにひどく時間がかかるし、9月からは、これを毎週のように何回もやると思うと気が遠くなる。

ただし、ゆっくり進むと良いこともある。テキストを日本語のように読み飛ばせないし、語られていることの背景まで逐一調べないといけないから、テキストの「精読」を初めて自分でやった気がしている。とにかく時間がかかって、1時間で10ページも読めない。慣れるしかないと思う。

 

≪恐慌とは何か?≫

さてこの内容。この本は2010年に出版されており、そのメインテーマはCrisis(恐慌)。2008~9年にかけて顕在化したサブプライムローン危機をうけて執筆された本だ。

一般的な言葉で恐慌は、「生産過剰などの原因により、景気が一挙に後退する現象」のことを指す。このような景気後退局面は、主流派の経済学において、適切な金融政策を用いることで、ある程度回避できると考えられていたが、サブプライムローンの問題以降はその考え方が揺らいでいる、というのが大勢の見方となっている。一方で、「恐慌」はマルクス経済学の中でとても大切な概念になる。

ただし、元祖のマルクスが定義する恐慌と、存命するもっともパワフルな政治経済学者といえる、ハーベイの定義は、少し異なっている。なぜか。

マルクス理論の普通の理解では、恐慌を「資本主義に内在する基本的諸矛盾の爆発」と定義する。これに対し、ハーベイはより具体的に、恐慌を「余剰労働力と余剰資本が同時に存在すること」、言い換えれば「失業とカネ余りが同時に存在すること」としている。つまり、企業にお金があっても、雇用に結びつかない状態だと言える。

最近アメリカで「雇用なき景気回復」が指摘されているように、このプロセスは実際に起こっていることだ。企業はお金を稼いでいる。しかし、そのお金が新規の投資や雇用に振り向けられることはない。この2つの余剰が存在するとき、それはすでに恐慌状態に陥っている、つまり投資の行き場がない状態が続いている、という点に着目したい。

 

≪次の恐慌が迫っている?≫

ここで気になるのは、「恐慌とそれに続くもの凄くひどい不景気が、起きるのか?」「起きるとすればどこで、どのくらいの期間起きるのか?」ということである。

今年に入って行われた世界経済フォーラムで、投資家のジョージ・ソロスは、中国の経済が転換局面にあることに危惧を示す発言をしている。彼は中国の現状が、サブプライムローン危機前の米国経済に奇妙なほど似ているという(boloomberg)。

アメリカのサブプライムローン危機は、高リスクの住宅ローンが金融商品化され、ばら撒かれたことによる不動産バブルによって起こった。中国では、金融機関が個人投資家向けに国内で販売する資産運用商品の、「理財商品」が証券化されたローンの役目を果たしており、集められた資金は主に地方政府による投資に振り向けられているそうだ。下図参照(Zero Hedge)。

凡例のLGFVとは、Local Government Financing Vehicleのことで、中国の不動産開発の際に組成される特別目的会社だそう。民間から地方政府に直接融資ができないから、このペーパ会社を経由する。ややこしい。これだけではなく、中国は独特のシステムと用語が多くて、パッと図表を見ただけだとなんのことか良くわからないことが多い。

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ソロスは、「中国は外貨準備が十分にあるし、2~3年は大丈夫だろう、ただし輸出依存型の産業構造を内需先導型に転換しなければならない」という指摘をしているようだ。そして、しばらくは大丈夫だが、大局的に問題になるのは「中国のデフレの輸出であるという。」これは、人民元相場の調整による輸出促進政策のことで、先のマルクス経済学的言語でいえば、「恐慌(=カネあまり、人あまり)」を外国へ移転していることに他ならない。

この輸出政策を支えられている期間は、中国にとってソフトランディングのための猶予期間となる。有効需要を外国に振り向けることができなくなり、内需マーケットが育っていてもそれを越える生産力の倍化が起きたりすれば、その巨大なエネルギーを投入する新たな市場が必要となる。市場の規模的・地理的な拡大が無理なら、めちゃお金がかかるけど国民の目を奪える産業を育てることになる。これの続きは…想像するだけで、怖い。

ここまで考えてみると、政治経済のおおざっぱな流れを捉えるには、マルクスの理論を用いることがとっても有効であることに改めて気づく。ソロスやWarren Buffettのような有名な投資家は、資本主義経済の申し子みたいに思われるが、世代的にマルクス経済学を知らないはずは無い。根本的にシステムの弱点を理解しているから、有効な戦略を立てられるのであろう。

 

≪何をなすべきか?≫
本の中でハーベイは、反(脱)資本主義の理論的深化と、実践の必要性(または不可避性)を論じているが、そんなにはっきりとした理想像を示していない。これにフラストレーションを感じる学生もいたようだった。しかし、ハーベイ的には、物事の核心は個々の実践の中にあるので、理論を書くとき、メカニズムの分析はできても、次の一手を定義するのは領分にないというトコロだと思う。

その点で、最後のほうに登場するグラムシの思想は1つのキーとなるだろう。彼はマルクスと違って、本当に貧しい労働者の立場から、社会運動の現場に身を置き、その経験を活かして理論を書いたので、これこそハーベイが期待するインテリ像というところになるだろう。それが「Organic intellectual(有機的インテリ)」。(変な言葉…Organicと言う言葉にもうちょっと翻訳の工夫はないものか)

ちなみに、マルクスの父は弁護士で、家は代々ユダヤのラビだった。立派なひげもじゃの写真を見れば、どう考えても汗水たらして工場で働く階級の人ではない。そもそもマルクスが多くの本を読んで、多くの文章を残せたのも、彼が労働者では無いからだ。翻って、グラムシの主要な著作は獄中で書かれた。彼の場合、長い間投獄されたため、思考と著述以外に、できることが無かったのである。

しかし、いくら具体例を出すのが理論書の役目でないからといっても、疑問が残るところもある。ハーベイはオルタナティブな世界を実現する方途を、「anti-capitalist movement」と表現し、グラムシのような純粋に労働者階級のリーダーを想定しているように思われるが、一方で実際は「資本家」と「労働者」はオーバーラップしているという、現実も勿論認めている。たとえば、サラリーマンだけれど資産運用でかなり稼いでいるとか?

これをどう解釈するのか。
そもそも、現在も完全に資本主義的な社会ではなく、資本主義的な経済システムが主流となり、色々なシステムが平行して動いていると考えられる。そうであれば、企業のオーナーだって資本主義と違うシステムの一員として生きる側面では、資本家的でないことがあるのは、当たり前のことだ。

では、誰が何をすればマシになるのか。
ハーベイは本書の最後で、それは階級のメカニズムに目を凝らし、よく原理を理解して、直接的に攻撃することだと言う。階級(class)というと、非常に古臭い感じもするが、紋切り型の対立だけではなく、いろいろな階級があり格差がある。よりマシな世界を作る道筋は、おそらく、福祉政策を求める街頭でのデモとか、フェアトレード運動とか、政治的なものだけではないと思う。また、当初はアンチ主流だったが、現在は寧ろ主流になっているものを再考するという行為も含まれると思う(環境問題への対処など)。さらに言えば、社会的な・人間の集団を対象とした動きだけではなくて、主流からずれていくあらゆる活動も包含すると考えてよいと思う。例えば最小限の荷物を持って岩登りをするとか(とても生産的でないし、消費的でもない)。

以上、ハーベイの本のまとめと、頭の体操おわり。

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先週は3年間のプロジェクトでずっとご一緒したクライアントの方々に、四条で一席設けていただいた。月々の会合や海外展示会の出張などを通して、濃い経験を重ねることができたし、なにより、ものづくり企業の経営層にある方々と話し、その思考に触れることが一番の刺激だった。それぞれが自分の役目を見据え、新しいチャレンジをしている方ばかりで、関西人らしい気さくさも備えておられ、本当にお世話になった。

今思うのは、フィールドは違えど、将来に「どうにかして、追いつきたい」ということ。夜の四条烏丸で、一方ずつと握手を交わして別れた。

それから、つい先日は職場の人たちが関西在住の記念にタコパをしてくれた。たこ焼きだけじゃなくて、肉シュウマイなんかも作れる。シュウマイは、皮をひいて肉をつめ、皮をがんばってくっつけて、ふたをして蒸し焼きにするとよく火が通る。野球中継を見ながらの一人たこ焼きもオツらしい。

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