読書録 #8『Who Counts? : The powere of participatory statistics』×世銀セミナー×京大講義

日本では九州の地震の混乱が続いている中、ロンドンに来ている。一人で海外に来るのは初めて。思い出深い(平成27年度調査で何回も訪れたノデ)関空からインチョン、ヒースローへ。飛行機の遅れもあり、空港を出たのは夜の9時すぎだった。翌日はイギリスらしくグレーの空、雨の朝。

出発前の晩は事務所の若手とアルバイトさん、外注のデザイナーさんと、二条のオープンキッチンipeで飲み会。みんなで料理するのは楽しい。片付けだって楽しい。いい会だった。

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有給消化に入り、いくつかのタスクに手をつけ始めている。その一つは大学卒業後の仕事のこと。先週の金曜日は、世銀の東京事務所にて催されたキャリアセミナーに出席し、気候変動対策のプロジェクトを担当する専門官の職員の方の話を聞いてきた。

スピーカーの方は国内の大学院からカナダに留学、国内の研究機関を経て、アジア開発銀行、その後に世銀に入行、現職ではプロジェクトのデザインからクライアントへの提案、資金調達、行動計画の策定、進捗管理、実際の評価などを担当しているとのこと。

自分でも少し意外だったが、分野も外部環境も全く違うにかかわらず、1つのプロジェクトのフローを聞きながら、なんとなく具体的な仕事のイメージがつくようにように思えた。これ、2015年度に関わった業務のおかげではないかと思うこと。ボスについていくのではなく、自分で切り回す仕事から学ぶものって本当に多い。

さて、本のこと。サセックスのIDSに進学すると決まったからには、事前に少しでも開発学の業界の「常識」をおさえておいたほうが良かろう、ということで、IDSの看板教授(もう実質は引退しているみたいだけど)である、R.チェンバースが書いた本を選んだ。スタンダードなテキストは、分野の基礎文献になっているだろうから、日本語で流し読みすればいいやと思い、なるべく新しいものにした。ちなみに、日本語訳が出ておらず、以下は翻訳も私の個人的な見解になる。

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J.Holland, R.Chambers(2013)『Who Counts?: The powere of participatory statistics
チェンバースを始祖として、IDSには参加型開発の研究の流れがある。この本のテーマをさっくり言えば、「地域の開発において、量的指標を得る調査を、なるべく参加型で行うにはどうすればよいか」というところになるだろう。従来のやり方よりも、受益者参加型かつ、各種のデータを量的に把握してまとめる調査の方法論が(p.2)、13のケーススタディを通して紹介されている。各章の筆者はプロジェクトを担当した学者や開発コンサルタントで、アフリカ、南アジア、フィリピンがフィールドである。

本の構成は、3部構成で以下のような感じ。
Part1「参加型統計と政策の転換(Participatory statistics and politicy change)」
Part2「誰が現実を測るのか?〜モニタリングと評価における参加型統計(Who counts reality?: Participatory statistics in monitoring and evaluation)」
Part3「参加型インパクトアセスメントのための統計(Statistics for participatory impact assessment)」

Part1は住民を巻き込んだワークショップや、アクションプランの材料づくりが主で、Part2と3は開発プロジェクトの評価に、受益者の声をうまく組み入れる話が主となっている。具体的には、地域自然資源の量を住民自身が調べ、マップに落とし、土地利用モデルを考える(p.5)とか、農業生産性の向上を支援するプログラムの評価(chap.12)とか、分野や種類も様々で、「参加」の度合にはかなり差がある印象だ(そもそも、”participatory”の定義がまだよく分からないのだが)。

特に印象に残ったのは、11章の「干ばつ対策における参加型インパクトアセスメント(Paricipatory impact assessment in drought policy context)」。アフリカにおける干ばつ対策のプログラムを対象として、アンケートやインタビュー調査をもとに、その効果を分析したもので、正直に言うと何が参加型なのか判然としない章だが、プログラムで用いられた「デストッキング=在庫調整(commercial destocking)」という手法について着目したい。これは、干ばつが起こった際、業者に品質の低い(出荷できるほど肥えていない)家畜の買い取りを行わせるというもの。補助を受けた業者は、買い取りの可能な地域を選んで家畜を引き取り、出荷できるまで他所で飼育してから、市場に出荷するらしい。

このプログラムの評価の結果、プログラムの参加者は、他の干ばつ対策(食糧援助、家計補助など)と比べて、ほとんどの面でデストッキングが好ましい、と判定したそうだ。また、客観的な事実として、干ばつの間の家計収入の50%近くは、デストッキングで支えられていたとのこと。買い支えのための資金がなければ、実施できない方法だが、現物支給の支援でないので、農民にとっては使途の選択肢があり、災害の状況下でもコスト効率が良いと総括されている。

開発学の見地からのベーシックな判定はわからないが、私からみると、このプログラムで大事なのは、ローカルの経済が回り続けるのを支えることではないかと考える。地域の血液ともいえるお金の循環を止めないということであり、ここに日本で勉強してきたこととの繋がりを感じた。国際協力とか、援助とかを考える際、もっと地域開発(地域づくり、活性化と言っても良い)としての普遍性を見てもいいのではないかと思う。つまり、日本のコンサル業との類似、日本の地方で取り組まれている政策との共通性を探すことである。「地域の産業活性化を通じて、地域を元気にする」という考え方が、今後も基本になるし、もっと詰めて考えていかなきゃな、と思うところだ。

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もうひとつのタスクとして、この4月から京大の科目等履修生となり、先日は初めての講義に出席した。研究室の先輩が担当するセミナーで、ラオス・中国・韓国・ドイツ・イギリスからの学生がいる英語の授業で、留学準備としては最高。ちなみに履修登録していないので、当授業としてはフリーライダー。

初日からみっちりとディスカッションが行われたが、その進め方・授業の姿勢がとても参考になった。トピックは幅広くフレキシブルで、主流派経済学者からマルクス、制度派まで、いろいろな学説をつまみ食いしながら紹介。参加者全員に発言の機会を回し、議論のフェアさとオープンさを担保しながらお話を進めてくれる。こんな感じで授業ができる先生っていいなぁと思った。

そこで、5年後、10年後に何をしたいか、ということについて考えてみよう。現職は先生の紹介で応募した全くのコネ入社だが、「シンクタンクやコンサルで働きたい」というのを、ずいぶん前、何の気無しに話したことがある。大学2年生くらいの時に、バイト先の居酒屋での他愛ない世間話だった。就職活動は色々な分野にトライしてみたが、結局コンサルに辿り着き、3年が経ち、いまココ。

そういえば、「本筋として働きながら、色んなクライミングを楽しむ」というのも、ぼんやり口に出したことがあり、紆余曲折を経て、いまココ。

少ない経験則からの考えだけど、現時点でブツブツ言っていることが、今後実現されていく可能性は結構あるのだ。ただし、これまでは意図せずして気づいたら叶う、という所があった(心の深い所では意識していたのかもしれないが)。これは、自分の弱味だと思う。

どういうことかと言うと、「意図すること」にしてしまった途端、失敗する可能性が出てくるので、これを避けて通ってきたということである。失敗したくないから、自分の力不足を知るのが怖いから、全力でやらない。

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「自分の才能を分かろうとしておらず、それを磨いて、能力を発揮するのをサボっている」
「もっと努力しなさい」
これは、最近先の先輩に言われたことだ。傲慢に聞こえるかもしれないが、そう言ってくれる人がいるなら、どれだけのことが出来るか分からないが、信じてみたいと思う。

 

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  1. ピンバック: 読書録#13 R.Chambers “Revolutions in Development Inquiry” | katanonaoko

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